虐待防止のための指針

 1 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方

 高齢者の尊厳を保持するため、いかなる時も利用者に対して虐待を行ってはならない。

 (1)定義

 虐待をしている人、されている人の自覚は問わない。本人が望んでいたとしても、養護者が一生懸命介護をしていたとしても、結果が不適切であれば、虐待に該当する。

 ア 身体的虐待
 暴力的行為などで、身体にあざ、痛みを与える行為や、外部との接触を意図的に、継続的に遮断する行為
 <具体的な例>
 ①たたく、つねる、殴る、蹴る、やけどを負わせるなど
 ②ベッドに縛り付けたり、意図的に薬を過剰に与えたり、身体拘束、抑制をする 等

 イ 介護・世話の放棄、放任(ネグレスト)
 意図的であるか、結果であるかを問わず、介護や生活の世話を行っている養護者が、その提供を放棄または放任し、高齢者の生活環境や、高齢者自身の身体・精神状態を悪化させていること
 <具体的な例>
 ①入浴しておらず異臭がする、髪が伸びっぱなし、皮膚が汚れている
 ②水分や食事を十分に与えられていないことで、空腹状態が長時間に渡っていたり、脱水症状や栄養失調状態にある
 ③室内にゴミを放置するなど、劣悪な住環境の中で生活させる
 ④高齢者本人が必要とする介護・医療サービスを、相応の理由なく制限したり、使わせない
 ⑤同居人による「虐待と同様な行為」を放置する 等

 ウ 心理的虐待
 脅しや侮辱などの言動や威圧的な態度、無視、嫌がらせなどによって、精神的、情緒的な苦痛を与えること
 <具体的な例>
 ①排泄の失敗を嘲笑したり、それを人前で話すなどにより高齢者に恥をかかせる
 ②怒鳴る、ののしる、悪口を言う 
 ③侮辱を込めて、子供のように扱う
 ④高齢者が話しかけているのを意図的に無視する 等

 エ 性的虐待
 本人との間で合意形成がされない、あらゆる形態の性的な行為またはその強要
 <具体的な例>
 ①排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する
 ②キス、性器への接触、セックスを強要する 等

 オ 経済的虐待
 本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する金銭の使用を理由なく制限すること
 <具体的な例>
 ①日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない
 ②本人の自宅等を本人に無断で売却する
 ③年金や貯金を本人の意思・利益に反して使用する 等

 2 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項

 当事業所では、虐待及び虐待と疑われる事案(以下「虐待等」という。)の発生の防止等に取り組むにあたって「虐待防止検討委員会」(以下「委員会」という。)

 を設置するとともに、虐待防止に関する措置を適切に実施するための担当者を定める事とする。

 (1)設置の目的

虐待等の発生の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討するとともに、虐待防止に関する措置を適切に実施する。

 (2)虐待防止検討委員会の構成委員

  ・委員長は管理者が務める。

・委員会の委員は、管理者、介護職員、事務員とする。

 (3)虐待防止検討委員会の開催

・委員会は、委員長の招集により年1回以上開催する。

・虐待事案発生時等、必要な際は、随時委員会を開催する。

 (4)虐待防止検討委員会の審議事項

  ① 虐待に対する基本理念、行動規範等及び職員への周知に関すること

② 虐待防止のための指針、マニュアル等の整備に関すること

③ 職員の人権意識を高めるための研修計画策定に関すること

④ 虐待予防、早期発見に向けた取組に関すること

⑤ 虐待が発生した場合の対応に関すること

⑥ 虐待の原因分析と再発防止策に関すること

 (5)虐待防止のための担当者の選任

   虐待防止担当者は、運営規程で定めるところの虐待防止責任者とする。

 

 3 虐待防止のための職員研修に関する基本方針

 虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識を普及するものであるとともに、本指針に基づき、虐待の防止を徹底する研修を企画し実施する。

 委員会が本指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待防止のための研修を実施する。

 4 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針

 (1)虐待等が発生した場合は、速やかに市町に報告するとともに、その要因の速やか  

 な除去に努める。客観的な事実確認の結果、虐待者が職員であった場合は、役職位

 等の如何を問わず、厳正に対処する。

 (2)緊急性の高い事案の場合は、市町及び警察等の協力を仰ぎ、被虐待者の権利と生命の保全を最優先する。

 5 虐待等が発生した場合の相談・報告体制

 (1)利用者、利用者家族、職員等から虐待の通報を受けた場合は、本指針に従って対応する。相談窓口は、2(5)で定められた虐待防止担当者とする。

     なお、虐待者が担当者の場合は、他の委員等に相談する。

 (2)利用者の居宅において虐待等が発生した場合は、関係機関に報告し、速やかな解決につなげるよう努める。

 (3)事業所内で虐待等が発生した場合は、虐待防止担当者に報告し、速やかな解決につなげるよう努める。

 (4)事業所内における高齢者虐待は、外部から把握しにくいことが特徴であることを認識し、職員は日頃から虐待の早期発見に努めるとともに、高齢者虐待防止検討委員会

     及び担当者は職員に対し早期発見に努めるよう促す。

 (5)事業所内において虐待が疑われる事案が発生した場合は、速やかに高齢者虐待防止委員会を開催し、事実関係を確認するとともに、必要に応じて関係機関に通報する。


 

   6 成年後見制度の利用支援に関する事項
  虐待の対応として、成年後見制度の活用が不可欠と想定される場面を次に掲げる事項に例示する。
 (1)経済的虐待のケース、もしくは、経済的虐待に発展するようなケース
 (2)身体的虐待などにより、老人福祉法上の措置により特別養護老人ホームなどに入所し、その対象者が、多額の財産を持っているケース
 (3)身体的虐待などにより、老人福祉法上の措置により特別養護老人ホームなどに入所したが、認知症により、措置から契約に移れないケース
 (4)財産上の不当取引の被害にあった者、またはあうと想定されるケース

 7 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
 (1)虐待に係る苦情・相談については、相談者や通報者の個人情報を保護する
 (2)虐待発見の相談・通報は秘密漏洩や守秘義務法規によって妨げられない
 (3)虐待の事実誤認により相談・通報をしたとしても秘密漏洩や守秘義務違反に問わることはない

 8 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
  利用者等は、いつでも本指針を閲覧することができる。また、当施設 HP において、いつでも閲覧が可能な状態とする。

 9 その他虐待の防止の推進のために必要な事項
  3に定める研修会のほか、外部研修にも積極的に参加し、利用者の権利擁護とサービスの質の向上を目指すよう努める。

 附則

 本指針は、令和611日より施行する。